幽霊より生きた人間が怖い。
なんて事はありえないのだ。
我々は何故幽霊を怖がるのか?
それは幽霊というものが意味不明な存在だからである。
映画においては、勝手に誰かに殺された癖にたまたま近くに来た僕らに迷惑をかけてくる傍迷惑な連中であることが多い。
とんでもないモンスター隣人である。
そんな彼らに対し我々が反撃の一手を取らないのは、彼らがよくわからない生命体であるからだ。
触れるのか?触われないのか?生命維持の為に必要な器官の有無は?呼吸はしているのか?テレビから出てくる原理は?日本語を喋れるのか?殴れば死ぬのか?催涙ガスで泣くのか?
その全ての問いに明確な答えがない。
つまり、彼らが襲ってきた際に有効な反撃が出来ない可能性が高い、という事である。
ナイフで刺して死ぬならば、テレビから出てきてウダウダしている所を刺せばよい。それで勝利である。
それで殺せないであろうから、幽霊は幽霊たりうるのである。
一方、人間。
ナイフで刺せば出血する。そして適切な治療が行われなければ失血で死んでしまう。
殴れば怯む。
実体がある。
つまり、相対した際に十分付け入る隙があるのである。
自分が勝てそうな相手に恐怖を抱くことがあるだろうか?
幽霊は「勝てそうにない」から怖いのである。
そのような幽霊より、個々人で相対した際の対策が組める人間が怖いのはあり得ないのである。
確かに人間は怖いんですけれども、ホラーにおいては人間の怖さで雑にオチをつけないでほしいと思います。
おばけがこわい。
誰か添い寝をしてくれ。
とあるアパートの最上階で、夜の間煌々とした輝きを放ち続けている部屋に住んでいるのは私である。
光の下で眠りたい。下でしか眠れない。
私が光の下で眠る間、どなたかに暗闇のなかで戦っていてほしい。
おばけがこわいです。たすけてください。